保育園における食育の取り組みとは?保育園の食育プログラムとは?
記事更新日:2024年8月20日保育園に通うお子さんの食事について、どのような教育が行われているのか気になる保護者の方も多いことでしょう。
子どもの成長を支えるために、保育園では食育を重視し、さまざまな取り組みを行っています。
ここでは、保育園での食育の具体的な活動やその目的について解説します。
健康的な食習慣の確立や食の楽しさを伝えるための工夫を知ることで、ご家庭での食育にも役立つ情報をお伝えします。
子どもを保育園に通わせるときは、保育園でどのような食育を行っているのか気になりますよね。幼少期は日常の体験からさまざまなことを学び、心身の基礎を作る重要な時期です。食は人間が活動するために必要なエネルギーですから、当然、子どもの成長に関して大きな影響力を持っています。
そのような理由から、保育園でも食育は重要な教育の1つとして取り入れられており、さまざまな取り組みが行われています。今回は、保育園における食育の目的とその具体的な取り組み方について紹介します。
目次
保育における食育の目的
食育は、子どもたちの健やかな成長と発達を支えるために欠かせない教育の一環です。
保育の現場での食育の目的は、子どもたちが健康的な食生活を身につけることにあります。
ここでは、具体的な目的とその実現方法について詳しく解説します。
健康な食事リズムを持つ子どもを育てる
健康な食事リズムは、子どもたちの体と心の成長にとって非常に重要です。
規則正しい食事時間を守ることで、体内時計が整い、消化器官の機能が正常に働くようになります。
保育園では、子どもたちに毎日決まった時間に食事を摂る習慣を身につけさせることが大切です。
食事リズムの確立方法
決まった時間に食事を提供する
朝食、昼食、午後のおやつなど、毎日同じ時間に食事を摂ることで、子どもたちの体内リズムを整えます。
食事の前後に適度な運動を取り入れる
食事前に体を動かすことで食欲を促し、食後に軽い運動をすることで消化を助けます。
適切な食事量の提供
子どもたちの年齢や活動量に応じた適切な食事量を提供し、過食や偏食を防ぎます。
食の好奇心を育むために
子どもたちが多様な食材や料理に興味を持ち、自ら進んで食べるようになることは、健康的な食習慣の形成に繋がります。
保育園では、食の好奇心を育むための工夫を行っています。
食の好奇心を引き出す活動
食材に触れる機会を増やす
子どもたちが実際に野菜や果物に触れ、その香りや質感を感じることで、食材への興味が湧きます。
調理活動に参加する
簡単な調理活動に参加することで、自分で作った料理を食べる楽しさを味わい、食への興味が深まります。
季節の食材を取り入れる
季節ごとの食材を使った料理を提供し、旬の味覚を楽しむことの大切さを教えます。
食事を共に楽しむ人間関係の構築
食事は単なる栄養補給の場ではなく、友達や先生と一緒に楽しむ大切なコミュニケーションの場でもあります。
共に食事をすることで、人間関係の構築が促されます。
食事を通じたコミュニケーションの促進
グループでの食事
グループごとにテーブルを囲んで食事をすることで、自然な会話が生まれます。
食事中の会話を楽しむ
食事中に楽しい話題を提供し、会話が弾むように工夫します。
これにより、子どもたちは食事の時間を楽しみにするようになります。
家族のような雰囲気を作る
保育士が積極的に子どもたちと会話を交わし、家族のような温かい雰囲気を作り出すことが大切です。
食事作りに関わる経験の重要性
子どもたちが食事作りに関わることで、食材や料理に対する理解が深まり、食に対する感謝の気持ちが育まれます。
食事作りの体験活動
調理体験
簡単な料理やお菓子作りを体験させることで、食材がどのように変化するのかを学びます。
栽培活動
野菜や果物を自分で育てることで、食材がどのように成長するかを知り、食べ物への興味と関心が高まります。
収穫祭やクッキングデー
収穫した食材を使った料理を作るイベントを開催し、収穫の喜びと食の楽しさを共有します。
食べ物を話題にするコミュニケーションの促進
食べ物について話すことは、言葉の発達やコミュニケーション能力の向上にも繋がります。
保育園では、食べ物を話題にすることで、子どもたちの興味を引き、会話の機会を増やしています。
食べ物をテーマにした会話の工夫
食材クイズ
食材に関するクイズを出し合い、楽しく学びながら会話を楽しむ機会を作ります。
食べ物の絵本や歌
食べ物をテーマにした絵本や歌を取り入れ、自然な形で食べ物に関する会話を促します。
食事前後の話し合い
食事の前に「今日は何を食べるか」を話し合ったり、食後に「何が美味しかったか」を共有したりすることで、食事に対する関心を高めます。
保育園での実践的な食育活動
保育園における食育活動は、子どもたちが健康的な食習慣を身につけるための重要な要素です。
食育活動を通じて、子どもたちは食べ物の大切さや食事の楽しさを学びます。
ここでは、保育園での具体的な食育活動について詳しく解説します。
午前中の活動で体を動かす工夫
健康な食習慣の一環として、午前中に体をしっかり動かすことは非常に重要です。
子どもたちが適度に運動することで、食欲が増進され、食事がより楽しいものとなります。
屋外での活動
屋外での活動は、子どもたちが自然と触れ合いながら体を動かす良い機会です。
保育園では、天気の良い日に広い園庭や近くの公園で遊ぶ時間を設けています。
砂場遊びやボール遊び、滑り台などの遊具を使った遊びは、子どもたちにとって楽しく、体力をつけるのにも効果的です。
室内でのリズム体操
悪天候の日や寒い季節には、室内でのリズム体操が効果的です。
音楽に合わせて体を動かすリズム体操は、子どもたちのリズム感を養いながら、全身の運動になります。
簡単なダンスやストレッチを取り入れたリズム体操は、短時間で効果的に体を動かせるため、毎日の活動に取り入れやすいです。
給食以外の特別食の取り入れ
日常の給食とは異なる特別食を取り入れることで、子どもたちの食への興味を引き出し、食の楽しさを伝えられます。
季節の行事に合わせた特別食
日本の伝統的な行事に合わせた特別食を提供することで、子どもたちは季節の移り変わりや文化を学べます。
例えば、節分には恵方巻きを食べたり、ひな祭りにはひな寿司を作ったりすることで、食を通じて日本の文化に親しむ機会を作ります。
誕生日のお祝い
子どもたちの誕生日には、特別なメニューやケーキを用意してお祝いします。
みんなで誕生日を祝うことで、食事が楽しい思い出となり、仲間との絆が深まります。
また、誕生日の子どもが好きな料理をリクエストできる機会を設けることで、自分の好みや意見を表現する練習にもなります。
楽しい食事時間を友達や先生と共に
食事は単なる栄養補給の場ではなく、友達や先生と一緒に楽しむ大切なコミュニケーションの場です。
保育園では、子どもたちが食事を楽しむための工夫をしています。
グループでの食事
子どもたちがグループごとにテーブルを囲んで食事をすることで、自然と会話が生まれます。
食事中の会話を通じて、子どもたちは友達との交流を深め、社交性を養えます。
また、グループでの食事は、子どもたちが協力して食事を準備する機会にもなります。
食事中の話題提供
食事中に楽しい話題を提供することで、会話が弾み、食事の時間が一層楽しいものになります。
保育士は、食材に関する話題や、季節の出来事について話すことで、子どもたちの興味を引き出し、自然な形で食育を進めます。
当番活動で食事準備を手伝う機会
当番活動として食事の準備を手伝うことは、子どもたちにとって貴重な学びの機会です。
食事の準備に関わることで、子どもたちは食べ物に対する感謝の気持ちや、責任感を育めます。
食事準備の具体的な活動
テーブルの準備
テーブルクロスを敷いたり、箸やスプーンを並べたりすることで、子どもたちは食事の準備に関わる楽しさを学びます。
配膳の手伝い
食事の配膳を手伝うことで、子どもたちは他の子どもたちのために働く喜びを感じ、自分の役割に責任を持つことができます。
後片付け
食事後の後片付けを手伝うことで、子どもたちは自分たちで使った道具をきちんと片付ける習慣を身につけます。
自分で育てた食材を食べる体験
自分で育てた野菜や果物を食べる体験は、子どもたちにとって非常に貴重な経験です。
食材がどのように育ち、食卓に並ぶのかを理解することで、食べ物への感謝の気持ちが育まれます。
園内での栽培活動
菜園づくり
保育園の庭やプランターで野菜やハーブを育てることで、子どもたちは植物の成長過程を観察できます。
季節ごとに異なる植物を育てることで、自然のサイクルを学びます。
収穫の喜び
育てた野菜や果物を収穫することで、子どもたちは達成感を味わい、食べ物に対する興味がさらに高まります。
収穫した食材の調理体験
収穫した食材を使った調理体験は、子どもたちにとって食育のハイライトです。
自分たちで育てた食材を使って料理を作ることで、食事の準備から食べる喜びまでを一貫して体験できます。
簡単な料理の作成
収穫した野菜を使ってサラダを作ったり、スープを作ったりすることで、子どもたちは食材の変化を楽しみます。
食事会の開催
収穫祭や特別な食事会を開催し、子どもたちが自分たちで作った料理を皆で楽しむことで、食べることの喜びを共有します。
保育園での食育活動は、子どもたちが健康的な食習慣を身につけるための重要な教育です。
午前中に体を動かすことや、特別食の取り入れ、楽しい食事時間の提供、食事準備の手伝い、自分で育てた食材を食べる体験など、さまざまな活動を通じて、子どもたちは食べ物の大切さを学びます。
これらの活動を通じて、子どもたちは健康で充実した生活を送るための基礎を築けます。
保護者との連携による食育の推進
保育園における食育は、園内での活動だけではなく、家庭での取り組みとも密接に関連しています。
保護者との連携を強化することで、子どもたちがより一層健康的な食習慣を身につけられます。
ここでは、保護者との連携を深めるための具体的な方法について詳しく解説します。
家庭での食育活動のサポート
家庭での食育活動をサポートすることは、保育園での食育の成果をより高めるために重要です。
保育園と家庭が一体となって取り組むことで、子どもたちはより効果的に健康的な食生活を学べます。
食育プログラムの共有
保育園で実施している食育プログラムを家庭でも取り入れられるように、保護者に対してプログラムの内容や進捗を定期的に共有します。
例えば、季節の食材を使った料理のレシピや、栄養バランスの良い食事のメニューなどを紹介します。
家庭での実践方法の提案
家庭で簡単に実践できる食育活動を提案します。
例えば、週末に親子で一緒に料理を作る時間を設けることや、食材の買い出しに子どもを連れて行き、食材選びを経験させることが挙げられます。
これにより、子どもたちは食べ物への興味をさらに深められます。
保護者への食育情報の提供
保護者が食育の重要性や具体的な取り組み方法を理解することは、家庭での食育を促進するために欠かせません。
保育園では、保護者への情報提供を積極的に行います。
食育セミナーの開催
保育園で食育に関するセミナーを開催し、保護者に対して最新の栄養情報や食育の重要性を伝えます。
専門家を招いて講演を行うことで、保護者は信頼性の高い情報を得られます。
ニュースレターの発行
定期的にニュースレターを発行し、保護者に食育に関する情報を提供します。
ニュースレターには、簡単なレシピや食材の紹介、子どもたちが参加できる食育イベントの情報などを掲載します。
これにより、保護者は家庭での食育活動に役立つ情報を常に手に入れることができます。
親子で参加する食育イベントの開催
親子で参加できる食育イベントを開催することで、家庭での食育活動をサポートします。
これにより、親子の絆を深めながら、食育の重要性を実感できます。
料理教室の開催
親子で参加できる料理教室を開催し、一緒に料理を作る楽しさを体験してもらいます。
料理教室では、栄養バランスの良いメニューを一緒に作ることで、健康的な食生活の大切さを学びます。
食材の栽培体験
保育園の庭や近くの農園で、親子で食材の栽培を体験します。
種まきから収穫までの過程を親子で経験することで、食べ物の大切さや自然への感謝の気持ちを育てます。
家庭での食事習慣の共有と改善提案
保護者との連携を強化するためには、家庭での食事習慣を共有し、改善の提案を行うことが重要です。
保護者が家庭での食事習慣を見直し、改善することで、子どもたちがより健康的な食生活を送れます。
食事日記の活用
保護者に食事日記をつけてもらい、家庭での食事内容や食事の時間を記録してもらいます。
定期的に保育園でその内容を確認し、栄養バランスの改善点や、食事時間の調整などをアドバイスします。
個別相談の実施
保護者との個別相談を実施し、家庭での食事習慣や食育の取り組みについて話し合います。
保育士は、保護者の悩みや疑問に答えながら、具体的な改善提案を行います。
これにより、家庭での食育活動がより効果的に行えるようサポートします。
保育士に求められる食育の知識
保育士にとって、食育の知識は非常に重要です。
食育を通じて、子どもたちは健康的な食習慣を身につけ、食べることの楽しさや食べ物の大切さを学びます。
保育士が食育の知識を持つことで、子どもたちとの食事場面での役割が明確になり、指導の幅も広がります。
ここでは、保育士に求められる食育の知識とその重要性について詳しく解説します。
子どもたちとの食事場面での役割
保育士は子どもたちとの食事場面で多くの役割を担っています。
食事は単なる栄養補給の場ではなく、教育やコミュニケーションの場でもあります。
ここでは、保育士が食事場面で果たすべき具体的な役割について解説していきます。
健康的な食習慣の形成
子どもたちは、食事を通じて健康的な食習慣を身につけられます。
保育士は子どもたちに対して以下のような役割を果たします。
バランスの取れた食事の提供
栄養バランスを考えた食事を提供することで、子どもたちはさまざまな栄養素を摂取できます。
保育士は、栄養士と連携してメニューを考え、子どもたちに適切な食事を提供します。
食べ物の大切さを伝える
食事の際に食材の話をすることで、子どもたちは食べ物がどのように作られ、どのようにして食卓に並ぶのかを学びます。
例えば、野菜の栽培方法や収穫の話をすることで、食べ物への感謝の気持ちを育めます。
食事のマナーと礼儀の指導
食事は、マナーや礼儀を学ぶ絶好の機会です。
保育士は子どもたちに対して、食事のマナーや礼儀を教える役割を果たします。
基本的な食事マナーの指導
食事中の基本的なマナーを教えることで、子どもたちは他人と一緒に食事をする際の礼儀を身につけます。
例えば、食べ物を口に入れる前に感謝の言葉を述べる、口を閉じて食べる、食べ物を粗末にしないなどのマナーを教えることが重要です。
食器の使い方の指導
食器の使い方を教えることで、子どもたちは適切な食器の扱い方を学びます。
例えば、箸の正しい持ち方やスプーンとフォークの使い方を教えることで、子どもたちは食事をスムーズに進められます。
食事中のコミュニケーション促進
食事中のコミュニケーションは、子どもたちの社会性を育む上で重要です。
保育士は子どもたちが楽しく会話をしながら食事をするよう促します。
話題の提供
食事中に楽しい話題を提供することで、子どもたちは自然と会話を楽しめます。
例えば、今日の給食のメニューについて話したり、最近の出来事を共有したりすることで、会話が弾みます。
聞き上手になる
子どもたちの話をしっかりと聞くことで、彼らの気持ちや考えを理解し、信頼関係を築けます。
保育士は、子どもたちが話しやすい雰囲気を作り、積極的にコミュニケーションを図ります。
指導の幅を広げる食育の知識の必要性
保育士が食育の知識を持つことで、指導の幅が広がり、子どもたちに対する教育の質が向上します。
ここでは、食育の知識がどのように指導の幅を広げるのかについて詳しく解説していきます。
栄養学の基礎知識
保育士が栄養学の基礎知識を持つことで、子どもたちに対してより効果的な食育が行えます。
栄養素の理解
栄養素の働きやバランスの取れた食事の重要性を理解することで、子どもたちに対して適切なアドバイスができます。
例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の役割を説明し、どのような食品に含まれているかを教えられます。
食事の計画と準備
栄養バランスを考えたメニューの作成や食事の計画を立てることで、子どもたちが健康的な食生活を送れるようサポートします。
保育士は、栄養士と協力してバランスの取れた食事を提供するための計画を立てます。
食品の安全性に関する知識
食品の安全性についての知識を持つことは、保育士にとって重要です。
子どもたちが安全に食事を楽しむためには、食品の取り扱いや保存方法について正しい知識が必要です。
食品の取り扱い方法
食材の取り扱い方法や調理の際の衛生管理について理解することで、食中毒のリスクを減らせます。
保育士は、手洗いや調理器具の消毒、食品の適切な保存方法などを徹底します。
アレルギー対応
食物アレルギーを持つ子どもに対して適切な対応を行うためには、アレルギーに関する知識が必要です。
保育士は、アレルゲンを含まない食材の選び方や、アレルギー症状が出た場合の対応方法を学びます。
食育プログラムの企画と実施
食育プログラムを企画し実施することで、子どもたちが食に対する興味を深められます。
保育士は、創意工夫を凝らしたプログラムを通じて、子どもたちに楽しく学んでもらうことが重要です。
栄養教育プログラム
子どもたちが楽しみながら学べる栄養教育プログラムを企画します。
例えば、食材の栄養素を学ぶクイズや、栄養バランスを考えたメニューを作るワークショップなどを行います。
調理体験
子どもたちに簡単な調理体験を提供することで、食材に触れる楽しさや料理の楽しさを学びます。
野菜を切る、サラダを作る、スープを作るなどの体験を通じて、食への興味を深めます。
食育に関する情報発信
保育士が食育に関する情報を保護者に発信することで、家庭での食育活動をサポートします。
保育士は、保護者に対して食育の重要性や具体的な取り組み方について情報提供を行います。
食育だよりの作成
定期的に食育だよりを作成し、保護者に配布することで、家庭での食育活動を促進します。
食育だよりには、季節の食材を使ったレシピや、栄養バランスの良い食事の取り方などの情報を掲載します。
食育イベントの開催
保護者と一緒に参加できる食育イベントを開催し、家庭での食育活動をサポートします。
例えば、親子で一緒に料理を作るイベントや、食材の栽培体験を通じて、食への興味を深める活動を行います。
保育士に求められる食育の知識は、子どもたちの健康的な成長を支えるために非常に重要です。
子どもたちとの食事場面での役割を果たし、指導の幅を広げるためには、栄養学や食品の安全性に関する知識が必要です。
また、食育プログラムを企画・実施し、保護者への情報発信を行うことで、家庭でも食育活動が継続されるようサポートします。
保育士が食育の知識を深めることで、子どもたちは健康で豊かな食生活を送る基礎を築けるでしょう。
保育での食育の目的
保育園では、厚生労働省の「保育所における食育の指針」に示された以下の5つの子ども像を目指した食育が行われています。まずはこの5つの子ども像について見ていきましょう。
お腹がすくリズムのもてる子ども
「お腹がすくリズム」は人間にとってとても重要です。規則正しく食事をとるには、食事をとる時間にしっかりお腹がすいている必要があります。仮に食事の時間になってもお腹がすいていないと、必要な量の食べ物を食べることができず、十分な栄養を取ることができなくなってしまいます。「お腹がすくリズム」を身体に身につけることは、身体の健やかな成長のために必要なことです。大人になってからの食習慣にも、大きな影響を与えます。
食べたいもの、好きなものが増える子ども
食育の目的の1つとして、食への関心を高め、食をとおした健康づくりを行うことがあります。自発的に「食べたい」「好きだ」と感じる食べ物が増えていくことは、子どもにとって非常に重要です。そういった感情が育つと、食に関する知識の習得がよりしやすくなります。
一緒に食べたい人がいる子ども
食育の重要性が叫ばれるようになった要因の1つとして、食事をひとりでとる「孤食」や、食卓を囲むそれぞれが別々のものを食べる「個食」が増加しているという問題があります。食事は「みんなで一緒に食べ物を食べることで、おいしさを共有する場」でもあります。しかし、孤食や個食では、その感覚を味わうことはできません。孤食や個食を続けていると、食べ物に関する興味や、正しい食生活に対する意識が薄れる原因にもなります。みんなで食事をする楽しさを学ぶことも、大切な食育です。
食事づくり、準備にかかわる子ども
食に対する関心を高めるためには、実際に食べ物を食べることだけでなく、食べ物を準備する工程を体験することも効果的です。たとえば、実際に食事を作ってみたり、食事の盛り付けを行ったりすることがあげられます。また、食べ物を実際に育て、食べ物がどのようにしてできるのかを知ることも、食に関する感謝の気持ちを育むことに繋がります。
食べものを話題にする子ども
会話のなかで食べ物の話題が多くなれば、子どもの食への関心がその分高くなります。子どもが自ら食べ物を話題にしたくなるよう、食べ物の魅力を子どもにしっかりと伝えることが大切です。子どもは大人が思ってもみないような事柄に関心を抱くことも多いため、子どもが何に興味をもっているのかよく理解することで話題を広げていくことが必要です。
保育園での食育活動
保育園では5つの子ども像を意識し、普段の活動のなかにさまざまな食育を取り入れています。そのなかには、保育園で過ごすうちに自然と食に対する知識や関心が高まるようなさまざまな工夫が見て取れます。
午前中に体をしっかり動かす
保育園では午前中に散歩に出かけたり、体を使って遊んだりする時間を設けています。こうすることで、子どもたちが給食の時間に空腹を感じる習慣を身につけることを目指しています。
普段の給食以外の特別食を取り入れる
保育園では季節に合わせたおやつや、イベントごとに合わせた特別なメニューを用意し、子どもたちの味覚を刺激するよう工夫しています。たとえば、桃の節句に桜餅を食べたり、クリスマスの時期にケーキをみんなで食べたりする保育園もあります。こうすることで子どもたちは、食に対する楽しさを感じることができます。
友達や先生と会話しながら楽しく食べる
保育園では、給食を仲間や先生と一緒に食べることを大切にしています。子どもたちはおいしさを共有しながら食事をとることで、「食事は楽しい」という感覚を養い、コミュニケーションについて学ぶことができます。食事の楽しさは食事に対する肯定的な気持ちを生み、食べることに対する興味をより強くさせるでしょう。
当番活動として食事の準備のお手伝いをする
保育園では給食の当番があり、子どもたちが自分の手で食事の準備を行います。料理を盛りつけたり、食器の後片付けをしたりすることで、子どもの食への理解が深まることが期待されています。 また、食事の前後には「いただきます」「ごちそうさま」というあいさつをすることを徹底しています。これにより、食事のマナーを身につけるとともに、食事に対する感謝の気持ちも養っています。
自分で栽培したものを食べる
保育園のなかには教育の一環として、子どもたちが野菜を育て収穫し、それを調理して食べるという取り組みを行っているところもあります。こうして食べ物の成り立ちを知ることもまた、食に関する興味を高めることに繋がります。
保育士に食育の知識が求められる理由
保育園では、さまざまな方向から食育としてのアプローチが行われています。保育園での食育をより効果的に実施するためには、食育に関する知識が保育士にしっかりと備わっていることが必要不可欠です。
子どもたちと食事をする場面が多い
保育園では給食やおやつなど、子どもがものを食べる作業に保育士が立ち会う機会が多くあります。そのため保育士は、保育の基本的な知識に加えて、食育に関する詳しい知識を持つことが重要になります。 食育は幼少期から取り入れることで、食に対する正しい知識を効果的に身につけていくことが可能となります。保育士は子どもにとって大切な時期をともに過ごすことで、子どもたちをしっかりと導いていかなければなりません。
子どもたちへの指導の幅が広がる
保育園では、親が用意した弁当ではなく保育園が用意した給食をみんなで食べます。保育園に通う子どものなかには、アレルギーなど食事をするときに注意が必要な事情を抱えている子どももいます。そのため、保育士は食に関するより専門的な知識を身につけておくことで、そのような子どもに対しても適切な指導を行うことができるようになります。 また保育園に通っている子どもは、1日のうちの長い時間を保育園で過ごします。そのため、保育士は子どもたちの食との繋がりをさまざまな角度から見つめ、食に関する知識や関心を高めるための手助けを行っていく使命があると言えるでしょう。
食育は保育園でもしっかり取り入れられている
幼少期は食育にとってとくに重要な時期です。それぞれの保育園は「保育所における食育の指針」に示された5つの子ども像を目指し、食育を意識したさまざまな取り組みを行っています。
実際に通う保育園での食育の内容を理解することができれば、家庭での食育とリンクさせることも可能です。そうすれば、子どもにとってより効果的な食育を実現することができるでしょう。食育について考えるときは、単に「食事をする」ことだけでなく、食事の準備や普段の会話などさまざまな場面をうまく活用することが大切です。
まとめ
保育園では、子どもたちの健康的な成長を支えるために多岐にわたる食育プログラムが実施されています。
具体的には、食事の規則正しいリズムを確立し、食材や料理に触れる体験を通じて、食への好奇心を育むことが重視されています。
また、食事を共に楽しむことで、人間関係の構築も図られています。
さらに、収穫や調理体験を通じて、食材の大切さや感謝の気持ちを学ぶことも可能です。
保育園と家庭が連携し、食育に取り組むことで、子どもたちはより充実した食生活を送ることができるでしょう。