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【資格を仕事に】カフェオーナー 曽根由賀さんインタビュー

カフェオーナーは「お客さんとのセッションでお店を作っていく仕事」

カフェオーナーは「お客さんとのセッションでお店を作っていく仕事」

 

三軒茶屋でカフェ「Nicolas(ニコラ)」を経営する曽根由賀さん。茶沢通りを下北沢方面に5分ほど歩いたビルの2階にあるNicolasのドアを開けると、コーヒーやワイン、オリーブオイルなどが入り交じった、香ばしい香りがふわりと漂います。
曽根さんは、小さなころから「いつか、自分のお店を出す」という確信を持っていたそうです。念願の自分の店を構えた曽根さんに、カフェオーナーを目指したきっかけや、カフェを経営する上で大切にしていることを伺いました。

カフェはお酒を飲む人と飲まない人がいっしょに楽しめる場所

カフェはお酒を飲む人と飲まない人がいっしょに楽しめる場所

 

――いつから「お店を持ちたい」という思いを抱いていたのでしょうか?

 

曽根由賀さん(以下、曽根):小さいころに「お店屋さんごっこ」をしませんでしたか?私もよくお店やさんごっこをして遊んでいたのですが、そのころから「私は将来、○○屋さんとしてお店を持つんだろうな」と思っていました。高校卒業後は地元の福井から上京して、東京の製菓学校に入学。といっても、カフェを開きたいとかパティシエになりたいなど、特別な思いがあったわけではありません。当時は渋谷系の音楽が流行していたり、見たい映画が地元では見られなかったりしたこともあって、東京への憧れが強かったんです。

でも、いざ東京に来てみると、自分ではすごくマニアックな趣味だと思っていたものにたくさんの人が集まっていて、ショックを受けました(笑)。また、製菓学校では焼き菓子やケーキづくりの技術を学んでいましたが、自分は厨房にこもってケーキづくりをするタイプではないとうっすら感じていました。

 

――カフェに興味を持ち始めた理由は?

 

曽根:製菓学校在学中に、イートインスペースのあるカフェでアルバイトをしたことがきっかけで、人と関わりながらお店を営むことに憧れを持つようになりました。2000年頃にはカフェブームが起こり、それまでなかったような形態のカフェが次々とオープンすることになります。そうした世の中の動きにも影響を受けて、自分のお店を開きたいと思うようになりました。

カフェが流行るまでは、お酒を飲む人と飲まない人がいっしょに夜遊びできる場所がありませんでした。2軒目にカフェに行って、それぞれが好きな物を飲んだり食べたりしながらダラダラ過ごすというのが、当時の私の定番コース。お酒とコーヒー、デザートをいっしょに楽しめるのがうれしかったですね。

下積み時代には経営に必要な倫理観も培われた

下積み時代には経営に必要な倫理観も培われた

 

――製菓学校を卒業してカフェオーナーになるまで、どんな風に過ごしていたのですか?

 

曽根:製菓学校卒業後は、焼き菓子店やジャズ喫茶、食器やリネンを扱う会社など、10年以上いろいろな店舗や企業で働きました。下北沢のジャズ喫茶では、自分がそれまで積み上げてきたことがすべて打ち砕かれましたね。「今までやってきたことをここでやろうとするな」と怒られて、挽いたばかりのコーヒー豆をかけられたことも…。

「喫茶店はバンドと同じで、周りから見たらピカピカだけど中はボロボロ」「お店がうまく回ったときは、ジャズセッションみたいな一体感がある」など、ジャズ喫茶のオーナーに言われた言葉は今でもよく覚えています。当時は怖かったけれど、今思えば自分の店に対する美学のある方だったのでしょうね。店を営む上での倫理観も、そのときに培われたような気がします。

 

――カフェオーナーになるための下積み期間はどのくらい必要でしょうか?

 

曽根:私は特に下積みを意識して働いていたわけではありませんが、料理とデザートとコーヒーを提供するお店を開きたいなら、技術面では3年ほど下積みをすれば十分ではないでしょうか。お店を開くのは、結婚と同じようなものです。お店を開くことがゴールではなく、続けることのほうがずっと難しいのだと思います。

何を捨てて何を突き詰めるのかを決めるのがたいへんだった

何を捨てて何を突き詰めるのかを決めるのがたいへんだった

 

――お店をオープンした当時のことを聞かせてください。

 

曽根:2011年5月に、シェフである夫を含め数名でNicolasをオープンしました。その年の3月に東日本大震災が起きたときは、物件の引き渡しも大きな家具の搬入も終わっていて、大家さんとダクト工事の相談を行う予定でした。そこからのおよそ2ヵ月間、「こんなときにカフェをオープンしていいのか?」と葛藤しましたが、オープン日が決まっていたこともあり「やるしかない」という状況でしたね。もし時期がずれていたら、お店をオープンすることも躊躇していたかもしれません。

 

――たいへんな時期にオープンしたのですね。場所は、なぜ三軒茶屋を選んだのでしょうか?

 

曽根:Nicolasを開くまえから10年以上三軒茶屋に住んでいたので、三軒茶屋以外でお店を開くイメージがなかったんです。三軒茶屋は、今でこそ雑誌に取り上げられるなどして、おしゃれなイメージがあると思いますが、当時の茶沢通りにはコンビニやラーメン屋さんしかなかったんですよ。

 

――お店をオープンしてみて、一番たいへんだったことは何ですか?

 

曽根:料理やドリンクはもちろん、音楽や照明まで手を抜くことができないのが、カフェの楽しさであり悩ましいところです。お客様にはインテリアやBGMも楽しみながら過ごしてほしいと思っていたので、何を捨てて何を突き詰めるのかを決めるのがたいへんでしたね。シェフである主人と意見を出し合いながら、限られた時間とお金の中でやりたいことを形にできるように努力してきました。

こだわりは捨てない、でも「やりたくないことはしない」と決めていた

nicolas

 

曽根:良い意味で、想像していなかった方向へと進んでいると感じています。オープン当初は、コーヒーやデザートを楽しんでもらうお店になると思っていたのですが、最近ではワインと料理を目当てに来店されるお客様も多くいます。結果的に「大勢でも楽しめて、一人でも飲める」お店になっているのがうれしいですね。

 

――自然と理想の形に近づいているんですね。

 

曽根:そうですね。私は一人でワインを飲んだり本を読んだりするのが好きなんですが、バーだと店員さんとしゃべらなくてはいけない雰囲気があったり、周りが賑やかだったりして、居心地の悪さを感じることもありますよね。Nicolasでは、一人でいらしたお客様にもリラックスして過ごしてもらえるように、バーカウンターの高さに気を使っています。一人でゆっくり過ごしたいときも、シェフや私としゃべりたいときも対応できるよう、ギリギリ目が合う高さにしているんですよ。どの席も一人客ばかりという日もあります。そういう光景を見るとうれしいですね。

 

――最後に、カフェオーナーになりたいと思っている方にアドバイスをお願いします。

 

曽根:誰でも、初めから理想どおりのお店を作るのは難しいと思います。私は「こうしたい」という理想を広げるよりも「やりたくないこと」を先に決めておきました。例えば、集客のためにビラを配ったり、安いセットメニューを作ったりすることは絶対にやらないと決めていましたね。

また、高い理想を掲げても、知識や技術が伴わなければ夢で終わってしまいます。自分のカフェを開くために、食や衛生に関する資格を取ることで、知識も身に付きますし自信にもつながると思います。

こだわりは捨てなくてもいいけれど、初めから完璧でなくてもいい。少しずつ軌道修正して、理想に近づけていけばいいのではないでしょうか。お店という生き物の中で起こる事件を楽しみながら、自分自身もいっしょに成長していくことで、理想の形に近づいていくのだと思います。

 

<プロフィール>
曽根由賀(そね・ゆか)
国際製菓学校卒業。卒業後は、焼き菓子専門店や個人経営のカフェ、食器・リネンを扱う企業などに勤務。2011年5月に三軒茶屋にカフェNicolasをオープン。店内では、ライブや朗読・トークショーなどのイベントも開催している。

 

<店舗情報>
Nicolas(ニコラ)
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4-28-10 鈴木ビル2F
TEL/FAX 03-6804-0425
営業時間 16:00~24:00(火曜・第3水曜定休日)
http://www.nicolasnicolas.com/

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