ヨガの歴史とは?起源から現代までの歩みを年表つきで解説!
記事更新日:2024年8月21日「ヨガの歴史って?」
「ヨガっていつ頃からあるの?」
「ヨガの発祥地は?」
など、ヨガの歴史について興味がある方は上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。
ヨガは紀元前3000年頃から始まった古代のインドの精神的・肉体的な実践で、少なくとも5000年の歴史を持っています。
そこで今回は、ヨガの起源から現代までの歴史的な変遷を、年表を用いながら詳しく解説していきます。
ヨガの歴史について知りたい人必見の内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
目次
ヨガの起源とは?
ヨガの起源とは以下の通りです。
● ヨガの起源は古代インドに遡る
● 瞑想と呼吸法を基盤とした体系
順番に解説していきますね。
ヨガの起源は古代インドに遡る
ヨガの起源については、古代インドにさかのぼりましょう。ヨガとは、インドの宗教や哲学、文化と深く結びついた伝統的な実践方法といわれます。
ヨガの起源は紀元前2000年頃まで遡ると考えられています。当時のインダス文明の遺跡からは、瞑想や呼吸法を表す像が発見されており、ヨガの起源となる何らかの修行方法がこの時代にあったことが示唆されているのです。
その後、ヨガの思想や実践方法は、ウパニシャッドやバガヴァッド・ギーターなどの古代インド哲学の書物に体系化されていきました。特に有名なのが、ヨガの基本的な書とされる「ヨーガ・スートラ/ヨーガ根本教典」です。これは紀元前400年頃に編纂されたと考えられており、ヨガの理論的基盤を形成しています。
また、ヨガはヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教などの宗教的伝統とも密接に結びついていることはご存知でしょうか。瞑想や呼吸法、倫理観などは、これらの宗教思想の影響を強く受けて発展してきたのです。
このように、ヨガの起源は古代インドにあり、数千年の歴史を有する伝統的な実践方法であると言えるのです。現代のヨガは、この長い歴史と文化的背景を反映した形で発展してきたと考えられています。
瞑想と呼吸法を基盤とした体系
ヨガの瞑想とプラーナヤーマ(呼吸法)の起源は、古代インドの伝統的な知恵に深く根ざしています。
まず、両者の起源は、紀元前5世紀頃のヴェーダ文献にまで遡りましょう。
ウパニシャッドには、深い瞑想(サマーディ)によって自我の超越や宇宙意識の領域に至る可能性が説かれており、例えば、ブリハダーラニヤカ・ウパニシャッドでは、「自己(アートマン)」を直観的に認識することが、瞑想の究極の目的とされています。
また、バガヴァッド・ギーターでは、様々な瞑想の方法が説明されており、呼吸の制御が重要な実践とされていて、呼吸の制御(プラーナヤーマ)は、瞑想(ダーヤナ)に先立つ重要な段階として位置づけられています。
対象への集中(ドーシャナ)、焦点への固定(ダーラナ)、瞑想(ダーヤナ)といった段階的な修練の重要性が強調されているのです。
さらに、パタンジャリによる『ヨーガ・スートラ』では、瞑想の理論と実践が体系的に整理されました。ここでは、「ヨガ」の本質的な目的が「心の静寂」の実現にあると説かれ、様々な瞑想法が詳述されています。
「生命の息(プラーナ)」の重要性が説かれ、呼吸の制御が精神の統一につながるとされています。一方で、深い瞑想(サマーディ)によって自我の超越や宇宙意識の領域に至る可能性も示されているのです。
そして、パタンジャリの『ヨーガ・スートラ』では、呼吸法とより深層の瞑想法が体系的に整理されました。プラーナヤーマは「ヨガ」の八支(アシュタンガ)の一つに位置づけられ、瞑想(ダーヤナ)へとつながる実践とされています。
つまり、ヨガの呼吸法と瞑想は、ヴェーダ哲学に端を発し、長い歴史的な伝統の中で深化してきたものなのです。呼吸の制御が心身の集中を促し、瞑想へとつながるという考えは、ヨガの根幹をなす重要な思想といえるでしょう。
ヨガの根本経典『ヨーガ・スートラ』
ヨガの根本経典『ヨーガ・スートラ』とは以下の通りです。
● 古典的なヨガの経典
● 8つの段階からなるヨガの実践方法
順番に解説していきますね。
古典的なヨガの経典
『ヨーガ・スートラ』は、古典的なヨガの伝統において最も重要な経典の1つです。その著者とされるのがパタンジャリという人物で、おそらく2〜5世紀頃に著されたと考えられています。
この経典は全4章、196の詩節(スートラ)で構成されており、ヨガの理論と実践について体系的に記述されています。特に注目すべきは、ヨガ実践のための8つの段階、いわゆる「アシュタンガ・ヨーガ」が詳細に説明されていることです。これらの段階には、ヤマ(禁戒)-
暴力の不行使、真実の語り、盗まない、欲望のない生活、所有物への執着のない生活の5つの戒律-、ニヤマ(守則)-
清浄、満足、苦行、学習、イシュワラ(神への帰依)の5つの実践‐、アーサナ(姿勢)-
心身を落ち着かせ、リラックスできる快適な座位や立位などの体位‐、プラーナヤーマ(呼吸法)-
呼吸の制御と調整によって、プラーナ(生命エネルギー)をコントロールする‐、プラティアハーラ(感覚の制御)-
感覚器官を外的対象から引き離し、内面に向かわせる‐、ダーラナー(集中)- 1つの対象に意識を集中させる瞑想の状態‐、ダーヤナー(瞑想)-
集中した意識を持続させ、対象に没入する状態、サマーディ(三昧)-
意識と対象が一体化し、自我の認識が消失する至高の瞑想状態‐が含まれており、これらを段階的に修練することで、ヨガの究極的な目的である自我実現に至ると説明されています。
また、『ヨーガ・スートラ』には、クシティ(地)、アーパ(水)、テジャス(火)、マルート(風)、アーカーシャ(空間)といった身体の5つの要素の説明や、クレーシャ(苦しみの根源)、カルマ(業)、ヴリッティ(心の変容)といった心の働きと自我実現への道筋の説明など、ヨガの根本概念が詳しく述べられています。
現代においても、『ヨーガ・スートラ』はヨガの伝統の中で最も重要な経典の1つとされ、ヨガ実践の基盤となる知識を提供し続けています。ヨガを理解する上で、この古典的な文献の知見は欠かせないものとなっているのです。
8つの段階からなるヨガの実践方法
ヤマ(禁戒)
まずは内面の振り返りから始めましょう。日常生活の中で、暴力を避け、真実を大切にし、盗まず、欲望に惑わされず、所有物に執着しないよう心がけましょう。
ニヤマ(守則)
次に、清浄な心と身体を保つこと、満足の念を持つこと、苦行(瞑想や断食など)を行うことなどを意識しましょう。
アーサナ(姿勢)
マットの上で快適で安定したポーズを取り、背筋を伸ばし、足の位置を整えましょう。
プラーナヤーマ(呼吸調整)
ゆっくりと深い呼吸を行います。鼻から吸い込み、ゆっくりと吐き出す。時には息を止める練習も行いましょう。
プラティアハーラ(感覚の引き込め)
目を閉じ、周囲の音や光などの感覚を遮断し、内面に意識を向けましょう。
ダーラナー(集中)
一つのポイントや写真、または内なる光などに意識を集中させる瞑想を行います。
ダーラナー(瞑想)
集中した意識を持続させ、対象に没入した状態を維持しましょう。
サマーディ(三昧)
自我の認識が消失し、対象との一体感に達する深い瞑想状態を経験してみましょう。
このように、ゆっくりと8つの段階を丁寧に実践していきます。
呼吸と集中を大切にしながら、心身一体の状態を目指しましょう。
世界のヨガの歴史って?
世界のヨガの歴史について年表で解説していきますね。
紀元前300年頃 | 歴史上初めてヨガに関する説明が文献に登場する |
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400年頃 | ヨーガ・スートラができる |
1300年代 | ハタ・ヨーガ大成 |
1920年代 | 世界初のヨガ大学設立、ヨガ学科設置 |
1970年代 | アメリカ中心に瞑想メインのヨガブーム |
1990年代 | 世界規模のヨガブーム |
紀元前3世紀頃、ヨーガ・スートラの著者とされるパターンジャリが、ヨガの体系的な枠組みを確立しました。パターンジャリは、ヨガを8つの段階(ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナヤーマ、プラティアハーラ、ダーラナー、ダーヤナー、サマーディ)に分類し、ヨガの理論と実践方法を整理したのです。
これ以降、ヨガは主にインド亜大陸において発展を続けました。ウパニシャッド哲学やヴェーダ思想の影響を受けながら、様々な派生スタイルが生み出されていったのです。
中でも、12世紀頃のゴーラクシャナートによって確立されたハタ・ヨーガは大きな影響力を持ちました。身体的なアーサナの実践を重視するこの流派は、後の近代ヨガの基礎となっています。
こうした長い伝統の中で培われたヨガの知恵は、19世紀末にスワミ・ビデーカーナンダによってインドから西洋に紹介されることで、世界的に広まっていきました。
日本のヨガの歴史は?
日本の歴史について年表でご紹介しますね。
1919年 | 中村天風が 心身統一法 を考案 |
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1966年 | ヨガ・スートラが翻訳される |
1970年 | 第一次ヨガブーム |
1980年 | 第一回国際総合ヨガ世界大会が開催される |
2003年 | 日本ヨーガ療法学会が設立される |
2010年 | ホットヨガブーム到来 |
1920年代、中村天風が独自の「心身統一法」を提唱。1930年代にはヨガ・スートラの翻訳が行われ、古典的ヨガ思想が紹介されました。1970年代には第一次ヨガブームが起こり、1980年に国際ヨガ大会が東京、名古屋、京都、三島で開催された。2003年には日本ヨーガ療法学会が設立され、医療分野でのヨガ活用が始まったのです。近年では「ホットヨガ」ブームなど、時代とともにヨガの姿は変化し続けています。このように日本のヨガ史は長く、20世紀を通じて着実な発展を遂げてきたと言えるでしょう。
現代におけるヨガの多様化
現代におけるヨガの多様化は以下の通りです。
● ホットヨガ・パワーヨガの普及
● 医療分野で活用
● マインドフルネスやウェルネスと融合
順番に解説していきますね。
ホットヨガ・パワーヨガの普及
2000年代以降、日本においてホットヨガやパワーヨガが急速に普及していきました。ホットヨガは、40度前後に温められた室内で行うヨガで、体を深く伸ばすことができることから人気を集めたのです。一方、パワーヨガは呼吸と体の動きをダイナミックに組み合わせた激しいスタイルで、筋力向上やダイエット効果が期待できることから、特に若年層を中心に広がりました。
ホットヨガ、パワーヨガ双方の特徴は、従来のヨガに比べてより身体的な要素が強く、健康や美容の効果が前面に押し出されていることです。レッスンの雰囲気も、瞑想的な静かさから活気あふれる熱気に変わりました。
このように、2000年代以降の日本では、ヨガが「心身の調和」から「健康的な身体」への志向へとシフトしていき、ホットヨガやパワーヨガが広く普及していったのです。現代人のライフスタイルに合った新しいヨガの姿が生み出されたと言えるでしょう。
医療分野で活用
1980年代以降、日本では徐々にヨガが医療分野での活用が広がっていきました。日本ヨーガ療法学会が設立されたことで、ヨガの理論と技法を医療に応用する取り組みが本格化したのです。
具体的な活用例としては、リハビリテーションにおけるヨガの活用が挙げられます。ヨガの呼吸法や姿勢法が、運動機能の回復や筋力強化に効果的であることが分かってきました。
がん患者のケアにおいても、ヨガが心身のリラックスや免疫力の向上に役立つことが期待されています。
さらに近年では、メンタルヘルスの分野でもヨガの有効性が注目されるようになりました。ストレス管理やうつ病の改善など、ヨガが心の健康にも良い影響を及ぼすことが明らかになってきたのです。
このように、ヨガは単なる運動やリラクゼーションの域を超え、医療の現場でも重要な役割を果たすようになってきました。今後も、ヨガの医療応用は更に広がっていくことが予想されます。
マインドフルネスやウェルネスと融合
2010年代以降、ヨガはさらに医療や健康分野と密接に関わるようになり、特にマインドフルネスやウェルネスの概念と融合していくようになりました。
マインドフルネスとは、現在の瞬間に集中し、状況を受け入れる心の状態のことで、ストレス管理やメンタルヘルスの改善に効果があると注目されています。ヨガの瞑想や呼吸法は、まさにこのマインドフルネスの実践に通じるものがあり、両者の相乗効果が期待されるようになりました。
一方、ウェルネスとは、単なる健康だけでなく、心身の幸福な状態を意味する概念なのでホリスティックな視点から、食事、運動、睡眠、精神性などを総合的に整えることで、最適な健康状態を目指すアプローチです。ヨガはまさにこのウェルネスの考え方と合致するものがあり、相互に融合していくようになったのです。
このように、2010年代以降のヨガは、単なる運動の域を超えて、心身の健康を包括的にケアするための手段として位置づけられるようになってきました。マインドフルネスやウェルネスといった最新の健康概念とも深く結びついているのが特徴的です。
ヨガの哲学の背景は?
ヨガの哲学の背景は以下の通りです。
● ヒンドゥー教の思想
● サーンキヤ哲学
● ヴェーダンタ哲学
順番に解説していきますね。
ヒンドゥー教の思想
ヨガはもともと、古代インドのヒンドゥー教の中で発展してきた思想的・実践的伝統です。ヨガの根幹にあるのは、身体と精神の調和を目指すという考え方で、これはヒンドゥー教の基本思想と密接に関連しています。
例えば、ヨガに欠かせない瞑想の概念は、ヒンドゥー教の「アートマン」(個我)と「ブラフマン」(絶対者)の一体化を目指す思想に基づいています。また、ヨガの8つの修行段階は、ヒンドゥー教の「8つの段階」に対応しているのです。
さらに、ヨガの実践方法である「アーサナ」(ポーズ)や「プラーナーヤーマ」(呼吸法)には、ヒンドゥー教の神々への讃歌や祈りが組み込まれています。つまり、ヨガはヒンドゥー教の宗教的・哲学的背景の上に成り立っているのです。
したがって、ヨガを理解するには、ヒンドゥー教の思想的基盤を理解することが重要不可欠です。ヨガの歴史や実践法を探求する上で、ヒンドゥー教の影響力は極めて大きいと言えるでしょう。
サーンキヤ哲学
サーンキヤ哲学は、ヒンドゥー教の中でも特にヨガと深い関係にある重要な思想体系と考えられています。
サーンキヤ哲学の中核的な考え方は、「プラクリティ(原質)」と「プルシャ(霊我)」の二元論です。プラクリティは物質的存在、プルシャは精神的存在で、両者が調和することで、人間をはじめとする存在が成り立つとされています。
こうした二元論は、ヨガの実践において非常に重要な役割を果たしていると言えます。ヨガの目的は、プルシャ(精神)とプラクリティ(物質)の区別を明確にし、両者の調和を図ることにあるのです。つまり、サーンキヤ哲学の枠組みの中でヨガが展開されてきたと言えるでしょう。
また、サーンキヤ哲学の「プラクリティ」の概念は、ヨガの「クンダリーニ」の理論とも深くつながっています。クンダリーニとは、人間の内なる潜在的エネルギーのことで、サーンキャ哲学のプラクリティと密接に関連しているのです。
このように、ヨガの理論と実践は、サーンキヤ哲学の思想的基盤の上に成り立っているといっても過言ではありません。ヨガを理解するには、サーンキヤ哲学の理解が不可欠といえるでしょう。
ヴェーダンタ哲学
ヴェーダンタ哲学は、ヒンドゥー教の中で最も影響力の大きい哲学的潮流の1つと言えます。その中心的な思想は、「アートマン」(個我)と「ブラフマン」(絶対者)の同一性を説くことです。
このアートマンとブラフマンの一体性は、ヨガの実践と深く結びついています。ヨガの目的の1つは、個人の自我(アートマン)が最高の真理(ブラフマン)と調和すること、すなわち「自己実現」を達成することにあるのです。
瞑想やサマーディなどのヨガの実践法は、アートマンとブラフマンの調和を目指す手段として位置づけられています。また、ヨガの根本思想である「アーサナ」(ポーズ)や「プラーナーヤーマ」(呼吸法)には、ヴェーダンタ哲学の影響が色濃く反映されているのです。
さらに、ヴェーダンタ哲学の重要な概念である「マーヤー」(イリュージョン)は、ヨガの「無我」の思想と密接に結びついていて、ヨガの実践を通して、この「マーヤー」から解放されることが目指されるのでしょう。
つまり、ヨガの理論と実践は、ヴェーダンタ哲学の根幹をなす「アートマン=ブラフマン」の思想に強く影響を受けているといえるでしょう。ヨガを理解するには、ヴェーダンタ哲学の思想的背景を理解することが重要不可欠です。
まとめ
今回は、ヨガの歴史を起源から現在までを詳しく解説いたしました。
ヨガは古代インドに起源を持つ5000年以上の歴史があります。
初期のヨガは瞑想と自己内省が中心でしたが、時代とともに様々な要素が加わり、多様な形態へと発展してきました。
紀元前400年頃に著わされた『ヨーガ・スートラ』により、ヨガの理論的基盤が確立されました。その後、さまざまな流派が生まれ、19世紀から20世紀にかけてインドから世界に広まっていきました。
現代のヨガは、アーサナ(ポーズ)を中心に、呼吸法や哲学的な側面も取り入れられています。
長い歴史の中で、ヨガは常に人々の精神性と肉体性を統合する営みを続けてきたのです。